大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)1189号 判決

まず控訴人の信託法第十一条にもとずく抗弁について案ずるに、被控訴人が本件各約束手形の裏書譲渡をうけたのはみぎ各手形が満期に支払を拒絶せられた後の昭和三十四年二月初旬であること前記認定のとおりであり、本件訴の提起せられたのはその直後の同月十二日であることは本件記録に徴しあきらかである。また証拠によると、みぎ各手形が三誓鮪漁業生産組合から訴外池原謙三および同福井安太郎に譲渡せられたのは同組合の組合長理事である米沢六蔵が金融業を営む都民金融株式会社の代表取締役である訴外川山一雄にみぎ手形の割引を依頼したので同訴外人はかねてからの知合である前記池原謙三、同福井安太郎を紹介し同人らから出金せしめてみぎ割引をなさしめたものであること、しかるにみぎ手形は不渡となつたので訴外川山一雄は前記池原や福井のためみぎ手形金回収につき責任がありみぎ手形不渡の後もこれを保管していたこと、前記都民金融株式会社は、前記のように金融業を営む株式会社であるが、他人の依頼を受けその債権取立をなし、そのため訴訟をも提起したことがあること、たまたま被控訴人はみぎ川山一雄の叔父で右株式会社の監査役をし、かつ同会社の債権取立の訴訟事務を担当していたので前記池原、福井は支払拒絶せられた本件手形を被控訴人に裏書譲渡したこと、みぎ譲渡については通常取引に認められるような原因関係が明確に存在しないことをそれぞれ認めることができ、みぎ認定をくつがえすにたるなんらの証拠もない。

以上の各事実をあわせ考えるとみぎ池原謙三、福井安太郎がそれぞれ本件約束手形を被控訴人に裏書譲渡したはの同人をして手形の振出人たる控訴人にたいし手形金とりたての訴訟をなさしめることを主たる目的としたものと認められ、したがつてみぎ手形の譲渡行為は信託法第十一条に違反し無効であつて、被控訴人は本件手形債権を取得しないものと断ぜざるを得ない。

(牧野 谷口 満田)

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